岡部倫子氏の研究「感情労働がインバウンド消費と日本の接客文化に与える影響」

近年、訪日外国人旅行者の旅行消費、いわゆる「インバウンド消費」が増加しています。観光庁によると、2017年の訪日外国人旅行消費額は、前年と比較すると17.8%増加しており、総額で4兆4,162億円と推計されます。外国人旅行者の消費を費目別にみると、買物代が37.1%、宿泊代が28.2%、飲食代が20.1%を占めています。そして外国人旅行者の買物場所は(複数回答)、コンビニエンスストア(67.1%)、空港の免税店(62.8%)、ドラッグストア(61.7%)、百貨店・デパート(55.7%)の順になっています。

外国人旅行者のみならず、顧客が買物をし、宿泊し、飲食する場所では、従業員が顧客にサービスを提供しています。サービスを提供する職業、いわゆる接客業は、他の職業と比べると「感情労働」を伴う職業です。感情労働とは、肉体労働や頭脳労働とは異なり、サービス従業員が顧客に対応する際に、会社が規制する感情規制に従って、個人の感情をコントロールし、適切な対応をする労働形態です。従来は、客室乗務員、看護師、販売員などが、感情労働を行っていることが知られていました。しかし近年は、サービスを提供する企業とサービス就業人口が増加しており、どのような職種であっても、人とのコミュニケ―ションが必要な場合には、感情労働は重要と考えられています。

サービスを提供する企業は、従業員が顧客に対応する際に、企業にとって望ましい感情を表現するよう求めます。このような感情規制は、一般的に雇用契約には記載されませんが、社員教育の場などで示されます。例えば、研修や勉強会を通して、親切でソフトな対応をすることにより、従業員は顧客満足度を向上させることが求められることを学ぶかもしれません。特に最近ではSNSなどにより、従業員の顧客への対応が早急に伝達されるため、企業と組織は従業員と職員による適切な顧客への対応を重要視しています。

岡部倫子氏は経営学の研究者で、フランスで航空MBAを、日本で博士を取得した経験を活かし、サービス企業と従業員の感情労働の研究を行っています。氏は、従業員がサービスを提供する際に、「アフェクティブ・デリバリー」が効果的であると説いています。アフェクティブ・デリバリーとは、ポジティブな感情表現を意識的に用いることにより、顧客の満足度を向上させる対応を指します。氏は従事員が、ポジティブな感情表現を用いることは、顧客を満足させるのみならず、サービス従業員がおちいりやすい感情のストレスを予防し、職務満足の低下を最小限にすることを実証しています。

個人の感情をコントロールして、顧客満足度を向上させるという考え方は、日本の経済を支える一つである、これからのインバウンド経済の成長と日本の接客文化の発展に大いに役立ちます。質の高いサービスを提供する企業は、顧客に良い企業イメージを与え、SNSなどでその情報は拡散されて競争優位となり、リピーターは増えることでしょう。感情労働を有効に実践し、質の高いサービスを提供する企業が増加することは、日本のインバウンドビジネスと接客文化に影響を与え、今まで以上の経済成長に貢献すると考えられます。今後、感情労働はますます重要となるでしょう。

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